痛くない血便は危険?考えられる原因と受診の目安を専門医が解説
トイレで便に血が混じっているのを見つけると、多くの方が驚き、不安になります。ところが「痛みがないから、そのうち治るだろう」「たぶん痔だろう」と、そのまま様子を見てしまう方も少なくありません。
しかし、痛みを伴わない血便は、痛みがある血便よりもむしろ注意が必要なことがあります。このコラムでは、痛くない血便が見逃されやすい理由から、考えられる原因、すぐに受診すべき危険なサイン、そして原因を調べる検査(大腸カメラ)まで、消化器を専門とする立場からわかりやすく解説します。
「お腹が痛くない血便」が見逃されやすい理由
痛みがない=軽症ではない
血便というと「お腹が痛くて、血が出る」というイメージを持つ方が多いかもしれません。しかし実際には、痛みをまったく伴わない血便も少なくありません。そして、ここに大きな落とし穴があります。
「痛くないのだから、たいしたことはないだろう」——そう考えて受診を先延ばしにしてしまうのは、とても自然なことです。ですが、痛みの有無と病気の重さは必ずしも一致しません。後で述べる大腸がんのような重大な病気でも初期には痛みが出ないことがあります。
痛みがないからこそ危険が見過ごされやすい。これが、痛くない血便でまず知っておいていただきたい大切なポイントです。
痛くない血便で考えられる原因
痛みを伴わない血便には、さまざまな原因が考えられます。血の色によっても、出血している場所や疑われる病気が変わってきます。まずは血の色の目安を整理しておきましょう。
- 鮮血(鮮やかな赤色):肛門に近い部分からの出血。痔や直腸のポリープ・がんなどが考えられます。
- 暗赤色(暗い赤色):大腸からの出血が便と混ざったもの。大腸がん、大腸ポリープ、大腸憩室出血、炎症などが考えられます。
- 黒色(タール状の黒い便):胃や十二指腸など、より上のほうからの出血。この場合は別の病気が疑われます。
以下では、痛くない血便の代表的な原因を具体的に見ていきます。
痔(いぼ痔・切れ痔)
痛みのない血便で、もっとも多い原因が痔です。とくに痔核(いぼ痔)は、排便のときに鮮やかな赤い血がポタポタと出たり、便や紙に付いたりするのが特徴で、痛みを伴わないことが多くあります。
痔そのものは命に関わる病気ではありません。しかし問題なのは、「これは痔だろう」という自己判断です。痔だと思い込んでいたら、実は直腸がんだった——というケースは決して珍しくありません。痔があるからといって、ほかの病気がないとは限らないのです。
大腸ポリープ
大腸ポリープは、大腸の粘膜にできる隆起(できもの)です。多くは良性ですが、種類によっては時間をかけて大腸がんに進行するものがあります。ポリープの表面が便でこすれると、痛みのない出血を起こすことがあります。
大腸ポリープは、がんになる前の段階で見つけて切除できれば、将来の大腸がんを予防することにつながります。痛くない血便は、その大切なサインかもしれません。
大腸がん
痛くない血便で、もっとも見逃したくないのが大腸がんです。大腸がんは早期にはほとんど症状がなく、痛みも出ないことが多い病気です。進行してくると、便に血が混じる、便が細くなる、便秘と下痢を繰り返すといった変化が現れることがあります。
大腸がんは、日本人に非常に多いがんのひとつですが、早期に発見できれば体への負担が少ない内視鏡治療で治せる可能性が高い病気でもあります。だからこそ、「痛くないから大丈夫」と見過ごさず、血便というサインをきっかけに検査を受けることがとても重要です。
大腸憩室出血
大腸憩室とは、大腸の壁の一部が外側に袋状に飛び出したもので、日本人の多くが持っているとされます。憩室があること自体は病気ではありませんが、その中の血管が破れて出血することがあり、これを大腸憩室出血といいます。
大腸憩室出血の特徴は、腹痛を伴わずに突然、比較的多めの出血が起こることです。自然に止まることも多いのですが、なかには出血が続いて処置が必要になる場合もあります。突然まとまった量の血便が出たときは、注意が必要です。
潰瘍性大腸炎など
潰瘍性大腸炎やクローン病といった炎症性腸疾患(IBD)でも、血便が見られることがあります。これらは大腸などの粘膜に慢性的な炎症が起こる病気で、血液や粘液の混じった便が続くことがあります。
比較的若い世代にも見られ、症状がよくなったり悪くなったりを繰り返すのが特徴です。適切な診断と継続的な治療が必要な病気のため、血便が続く場合は一度きちんと調べておくことが大切です。
痛くないからこそ危険|放置してはいけない理由
大腸がんは早期では無症状・無痛
ここまで見てきたように、痛くない血便の背景にはさまざまな原因があります。その中でも特に強調しておきたいのが、大腸がんは早期の段階ではほとんど症状がなく、痛みもないという事実です。
痛みがないということは、体が「大丈夫」というサインを出しているわけではありません。むしろ、痛みという分かりやすい警告がないぶん、静かに進行してしまう危険があります。「痛くないから様子を見よう」という判断が、発見を遅らせてしまうこともあるのです。
血便は、痛みのあるなしにかかわらず、体からの大切なサインです。とくに痛くない血便こそ、一度きちんと原因を確かめておくことをおすすめします。
こんな血便はすぐ受診を|危険なサイン
血便のなかには、早めの受診が必要なサインがあります。次の項目に当てはまるものがないか、チェックしてみてください。
☐ 暗赤色や黒っぽい血便が出る(大腸や、より上の消化管からの出血の可能性)
☐ 黒くてドロっとした便(タール便)が出る
☐ 立ちくらみ・動悸・顔色が悪いなど、貧血のような症状がある
☐ 食欲がない、特に理由がないのに体重が減ってきた
☐ 便が細くなった、便秘と下痢を繰り返すなど、便通の変化がある
☐ 血便が一度きりでなく、繰り返し続いている
これらは、進行した病気や、まとまった出血のサインである可能性があります。一つでも当てはまる場合は、「痛くないから」と様子を見ずに、早めに医療機関を受診してください。
血便の原因を調べる検査(大腸カメラ)
大腸カメラでわかること
血便の原因を正確に突き止めるために、有効な検査が大腸カメラ(下部消化管内視鏡検査)です。先端に小型カメラのついた細い管を肛門から挿入し、大腸全体の内側を直接観察します。
大腸カメラでは、痔はもちろん、大腸ポリープ、大腸がん、憩室、炎症など、これまで挙げてきた多くの原因を目で見て確認できます。気になる部分の組織を採取して詳しく調べることもでき、「血便の原因が何なのか」をはっきりさせるうえで欠かせない検査です。
当院の苦痛の少ない大腸カメラ・日帰りポリープ切除
「大腸カメラは苦しそう」「恥ずかしい」といった不安から、検査をためらう方は少なくありません。当院では、そうした負担をできるだけ軽くするための工夫を行っています。
ご希望に応じて鎮静剤を使用し、リラックスした状態で検査を受けていただくことが可能です。また、検査中に前がん病変となりうる大腸ポリープが見つかった場合には、その場で切除する日帰りポリープ切除にも対応しています。検査と治療を一度に行えるため、体への負担や通院の手間を軽くできます。
健診で便潜血陽性だった方へ
便潜血陽性の意味と精密検査の必要性
健診の大腸がん検診で「便潜血陽性」という結果を受け取り、不安に思っている方もいらっしゃるでしょう。便潜血検査は、便に目に見えない微量の血液が混じっていないかを調べる検査で、陽性は「便に血が混じっていた」ことを意味します。
陽性だからといって、必ずがんがあるわけではありません。痔などが原因のこともよくあります。しかし一方で、大腸がんや大腸ポリープが原因で陽性になっているケースもあり、それは検査を受けてみないと分かりません。
大切なのは、便潜血陽性を「痔だろう」と自己判断で終わらせないことです。陽性が出た方には、精密検査である大腸カメラを受けていただくことを強くおすすめします。「一度陽性だったが、その後の検査で異常が見つからなかった」という安心のためにも、ぜひ一度ご相談ください。
血便が気になる方は当院にご相談ください
血便が出た、健診で便潜血陽性を指摘された、痛くないけれど繰り返し血が混じる——そうしたお悩みは、我慢せずに一度ご相談ください。当院では、消化器を専門とする医師が、丁寧な問診と必要な検査を通して、血便の原因をしっかりと見きわめます。苦痛の少ない大腸カメラや日帰りポリープ切除にも対応していますので、検査が不安な方も安心してお越しいただけます。
ご予約はWebから承っております。アクセスや初診の流れについては、以下のページをご覧ください。
まとめ
痛くない血便についてのポイントを、あらためて整理します。
- 痛みの有無と病気の重さは一致しません。痛くない血便こそ、見逃されやすく注意が必要です。
- 血の色(鮮血・暗赤色・黒色)によって、出血している場所や疑われる病気が変わります。
- 痛くない血便の原因には、痔・大腸ポリープ・大腸がん・大腸憩室出血・潰瘍性大腸炎などがあります。
- 大腸がんは早期には無症状・無痛のため、「痛くないから大丈夫」という自己判断は禁物です。
- 暗赤色・黒色便・貧血・体重減少・便が細いなどのサインがあれば、すぐに受診してください。
- 原因を正確に調べるには大腸カメラが有効です。便潜血陽性を指摘された方も、精密検査を受けましょう。
痛くない血便は、体からの静かな、しかし大切なサインです。放置せず、気になるときはたかつき駅前 船越内科・消化器内視鏡クリニックまで早めにご相談ください。